不動産の相続が発生すると、その登記手続きは複雑になりがちです。
特に、「数次相続」というケースでは、さらに手間がかかることがあります。
本コラムでは、数次相続の基本的な仕組み、手続きの原則や実務上の扱いについて、初心者にもわかりやすく解説いたします。
数次相続とは?
「数次相続」とは、不動産の名義人が亡くなり相続が発生したものの、その名義変更の登記が行われる前に、相続人の一人がさらに亡くなり、次の相続が開始されるケースを指します。
【具体例】
たとえば、母親Aが10年前に土地を所有していたものの、相続登記をしないまま亡くなったとします。
その後、父親Bが亡くなり、Bの遺言により子供Cがその土地を単独で相続することになった場合、以下のような二重の相続が発生します。
- 母Aから父Bへの相続(一次相続)
- 父Bから子Cへの相続(二次相続)
このように、いわゆる「数世代にわたる相続」が行われる状況を「数次相続」と呼びます。
数次相続の手続きの原則
【登記手続きにおける基本原則】
不動産登記法の原則では、不動産の権利変動の過程を忠実に反映させることが求められています。
そのため、数次相続が発生した場合でも、以下の順序で登記手続きを行う必要があります。
- 一次相続(例:母Aから父B)
- 二次相続(例:父Bから子C)
つまり、それぞれの相続について個別に登記申請を行う必要があります。
これにより、不動産の所有権がどのように移転してきたかを明確に記録することができます。
実務上の取り扱い:簡略化の可能性
【簡略化が認められる場合】
ただし、実務上は特定の条件下で、数次相続における中間の相続登記を省略し、最終的な相続人への登記を直接行うことが認められる場合があります。
具体的な条件
- 中間相続が単独相続の場合
- 単独相続とは、相続分のない他の相続人が存在しない、あるいは遺産分割や相続放棄によって相続人が1人に確定するケースを指します。
- 最終相続が共同相続でも、中間相続が単独相続であれば適用可能です。
このような場合、1つの登記申請で、一次相続と二次相続をまとめて行うことが可能です。
この簡略化は、1955年12月16日の法務省民事局長通知第2670号に基づいています。
簡略化が可能な理由
中間相続を省略しても、所有権移転登記が最終的な相続人名義で完結するため、公開性が損なわれるリスクが少ないことが理由です。
また、手続きが簡単になるという利点もあります。
【簡略化が認められない場合】
一方で、中間相続が単独相続でない場合、つまり共同相続である場合は、この簡略化は適用されません。
この場合、原則通り、一次相続と二次相続の登記を順を追って行う必要があります。
【具体例】
母Aから父Bへの相続が単独相続でない場合は、母A→父B→子Cと、2段階に分けて登記を行う必要があります。
数次相続における注意点
【相続登記の義務化】
2024年4月1日以降、相続登記が義務化されました。
これは、相続未登記の状態を防ぎ、不動産の権利関係を明確にするための法律改正です。
しかし、相続未登記のまま放置された不動産は依然として数多く存在します。
数次相続が発生している場合、このような義務化された登記手続きを進める際に、中間相続を省略した方法が役立つ場合があります。
専門家に相談する重要性
数次相続のような複雑なケースでは、法律や実務に精通した専門家のサポートを受けることが重要です。
不動産登記法や実務上の取扱いには細かい規定が多く、素人が独力で正確に手続きを進めるのは難しい場合があります。
まとめ
数次相続は、相続登記を放置していた場合に発生する複雑なケースですが、場合によっては中間相続を省略することで手続きを簡略化できる可能性があります。
ただし、この簡略化には特定の条件があり、すべてのケースに適用できるわけではありません。
相続手続きを正確かつスムーズに進めるためには、専門家のサポートが不可欠です。
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