遺言は、自分の財産をどのように分配するかを明確に示す重要な手段です。
遺言がない場合、法律に基づいて財産が分配されますが、これがトラブルの原因となることも少なくありません。
本コラムでは、現在の遺言制度の概要とデジタル化の進展、そして遺言を検討する際の重要なポイントについて解説いたします。
1. 現行の遺言制度
現在の遺言制度は、民法第960条で定められた厳格な方式に基づいています。
これは以下の目的を達成するためです。
- 遺言者の真意の確認:遺言が本人の意思に基づいていることを保証する。
- 偽造・改ざんの防止:遺言が不正に操作されないようにする。
- 慎重な意思決定の促進:遺言者が自らの意思を熟慮するよう促す。
例えば、自筆証書遺言では、遺言者が遺言の全文(財産目録を除く)、日付、氏名を自筆で記載し、押印する必要があります(民法第968条第1項)。
このような厳格な要件により、遺言が確実に遺言者の意思を反映していることを証明します。
しかし、こうした要件は煩雑であるとの指摘も多く、特に現代のデジタル社会では、より簡便で利用しやすい遺言制度への期待が高まっています。
2. デジタル遺言制度の検討背景
政府は2024年6月7日に「規制改革実施計画」を閣議決定し、デジタル技術を活用した新たな遺言制度の創設を目指す方針を示しました。
その一環として、2023年10月に専門家による「デジタル技術を活用した遺言制度に関する検討会」が開催され、2024年3月に報告書が取りまとめられています。
現在、「デジタル技術を活用した遺言制度に関する検討会の中間報告」(以下「中間報告」)が公表されており、これを基にデジタル遺言制度の現状を整理します。
3. デジタル技術を活用した遺言の位置づけ
中間報告によれば、現行の自筆証書遺言は引き続き維持される一方で、デジタル技術を活用した新しい遺言形式が検討されています。
このアプローチは以下の理由によります。
- 選択肢の多様性:すべての人がデジタル技術に慣れているわけではないため、多様な選択肢を提供することが重要。
- 手続きの簡略化:自筆での記載や押印の必要性を減らすことが検討されています。
また、デジタル遺言の制度化に伴い、従来の手続きとは異なる新たな要件も導入される可能性があります。
4. デジタル遺言の具体的な形式
デジタル技術を活用した遺言の形式については、以下のような例が検討されています。
(1) 遺言内容として扱われる電子データの例
- 読み取り可能なテキストデータ(手書き文書のスキャンデータやワープロソフトで作成されたデータなど)
- 音声や映像の録音データそのもの
(2) 遺言作成時の本人意思を確保するための手段
- デジタル技術
- 電子署名(マイナンバーカードの利用など)
- 生体認証技術(顔認証、指紋認証など)
- 立会人の存在
- 遺言作成時に第三者が立ち会い、意思を確認
- 保管システム
- 保管申請時の本人確認など
さらに、作成後の遺言の変更や撤回に関する手続きについても検討が進められています。
5. デジタル遺言の課題と展望
デジタル遺言が実現すれば、自筆での記載を省略し、規定された形式に基づく最小限の電子データ入力や電子署名による有効な遺言の作成が可能になると期待されています。
しかし、以下のような課題も指摘されています。
- 新たな要件の負担
デジタル署名にはマイナンバーカードやパスワード管理が必要となる可能性があるほか、生体認証には事前の顔や指紋の登録が必要です。
また、立会人の確保も課題となります。 - 簡便性の疑問
現行の自筆証書遺言と比較して手続きが簡素化されるかどうかについては、依然として議論が分かれています。
6. 遺言を検討するみなさまへ
今後、デジタル遺言の導入が進むことで遺言の選択肢が広がることが期待されますが、現段階では具体的な制度設計が確定していません。
そのため、遺言を検討する際は、以下の点に注意してください。
- 現行制度の理解
自筆証書遺言、公正証書遺言など、現在利用可能な形式を理解する。 - 状況に応じた選択
自分の状況に最適な形式を選び、法的要件を満たすようにする。 - 専門家への相談
遺言の作成や管理については専門家のサポートを受けることで、トラブルを未然に防ぐことが可能です。
7. シャルル株式会社の活用を
シャルル株式会社では、遺言作成のアドバイスを含め、相続に関する幅広いご相談に対応しております。
デジタル遺言の進展を注視しつつ、最適な遺言形式の提案やトラブルを回避するためのアドバイスを提供いたします。
どんな些細な疑問でもお気軽にご相談ください。
遺言はあなた様の大切な財産を守る重要な手段です。
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