公正証書遺言は、相続の手続きをスムーズに進めるための重要な手段の一つです。
公証人によって作成されるこの形式の遺言書は、法的に強い効力を持ち、その内容に対する疑義が生じにくいという特徴があります。
しかし、従来の公正証書遺言には、作成手続きに手間がかかり、特に公証役場へ出向く必要があるため、不便に感じる方も多いかもしれません。
そんな中、近年のデジタル化の波は、公正証書遺言の分野にも影響を及ぼし始めています。
本コラムでは、公正証書の制度やそのデジタル化に関する最新の動向について、初心者の方にも分かりやすく解説してまいります。
また、デジタル化によって相続手続きがどのように変わるのかを考えていただきます。
1. 公証制度の現状と課題
公証制度は、法律行為に関する事実を公証人が証明するために用いられる制度です。
この制度は、金融機関での借入契約や遺言書の作成など、さまざまな法的文書の信頼性を高める役割を果たしています。
公正証書の主な特徴は次の通りです。
- 公文書としての高い証拠力
公正証書は公証人によって作成された公的な文書であり、その内容は非常に高い証拠力を持っています。これは、後々の紛争を防ぐために非常に有効です。 - 原本の安全な保管
公正証書の原本は公証役場に保管されるため、偽造や改ざん、紛失のリスクが極めて低くなります。 - 強制執行の効力
公正証書は特定の条件を満たすことで、裁判を経ずに強制執行が可能となります。
これは、迅速に法的手続きを進めるための重要なポイントです。
しかし、このような利点がある一方で、公正証書に関する手続きは対面で行う必要があり、すべて書面でのやり取りが求められます。
これにより、物理的に公証役場へ足を運ぶ必要があることが、利用者にとっては負担となっていました。
2. 公正証書のデジタル化
こうした問題を解決するために、2023年6月6日に「公証人法」および関連法の改正が行われ、公正証書のデジタル化が進められることとなりました。
この改正により、公正証書に関する手続きをインターネットを通じて行うことが可能になり、公証制度の利便性が大幅に向上します。
以下が、公正証書デジタル化の主なポイントです。
- 公正証書の依頼(申請)が電子署名を用いてインターネットで行える
従来は、公証役場へ直接出向いて依頼を行う必要がありましたが、今後は自宅やオフィスからインターネットを介して手続きを進めることが可能になります。
これにより、時間や場所にとらわれずに公正証書を依頼できるようになります。 - ウェブ会議を通じた手続きが可能
公証人と申請者が、直接面会する代わりに、ウェブ会議を通じて手続きを進めることが可能になります。
これにより、遠隔地に住んでいる場合でも、迅速に手続きを進めることができます。 - 公正証書の原本が電子データとして作成・保管される
今後、公正証書の原本は紙媒体ではなく電子データとして作成され、公証役場で安全に保管されます。
このデジタル化により、情報の管理がより効率的に行われることが期待されます。 - 証明書の電子データ化
公正証書に関連する証明書(認証済みの写しや抄本)も、希望すれば電子データで提供されます。
これにより、書類を郵送する手間が省け、必要な情報を迅速に入手できるようになります。
改正法の施行日は、2023年6月14日から2年半以内に政令で指定されることとなっており、2024年2月時点では、まだ具体的な施行日は決まっていません。
3. 公正証書遺言のデジタル化
公正証書遺言とは、公証人が作成する遺言書のことで、遺言者の意思を法的に強固に保護するための手段です。
公証人が作成に関与するため、その内容の信頼性が高く、遺言の偽造や改ざん、紛失のリスクも少ないという利点があります。
しかし、その反面、作成手続きが煩雑であり、特に公証役場に出向かなければならないというデメリットがありました。
今回の法改正により、遺言書に関する規定(民法第969条)も変更されました。
この改正によって、公正証書遺言の作成手続きは、公証人法の規定に基づいてデジタル化されることとなります。
具体的には以下のような変更点があります。
- 遺言作成手続きのオンライン化
公正証書遺言の作成手続きも、インターネットを利用して行うことが可能になります。
これにより、遺言者は自宅や遠隔地からでも手続きを進めることができ、公証役場への訪問が不要になります。 - ウェブ会議による手続き
遺言者が希望すれば、公証人との対面手続きをウェブ会議で行うことができるようになります。
これにより、移動が困難な高齢者や忙しい方でも、柔軟に手続きを進めることができます。 - 電子データによる遺言書の管理
公正証書遺言の原本も電子データとして作成され、公証役場で保管されるようになります。
この電子データ管理により、情報の検索や管理が効率化され、必要なときに迅速にアクセスできるようになります。 - 証明書のデジタル提供
公正証書遺言に関連する証明書も、希望すれば電子データで提供されます。
これにより、郵送の手間が省け、必要な情報を速やかに手に入れることができます。
4. 公正証書遺言のデジタル化のメリットと課題
公正証書遺言のデジタル化によって、遺言作成のハードルが大幅に低くなります。
特に高齢者や遠隔地に住んでいる方にとっては、公証役場への訪問が不要になることで、負担が軽減される点が大きなメリットです。
また、ウェブ会議を通じた手続きや電子データでの管理により、時間や場所に制約されず、迅速かつ柔軟に手続きを進めることができます。
一方で、デジタル化に伴う新たな課題もあります。
例えば、インターネット環境が整っていない地域や、高齢者がデジタル機器に不慣れな場合には、手続きがスムーズに進まない可能性があります。
また、デジタルデータのセキュリティ対策も重要な課題であり、個人情報の漏洩や不正アクセスからデータを守るための厳重な管理体制が求められます。
5. デジタル化に対応した遺言作成のすすめ
今回の公正証書遺言のデジタル化は、遺言者にとって大きな利便性をもたらします。
しかし、デジタル化によって手続きが簡素化されたとしても、遺言書の内容が法的に適切であることは依然として重要です。
遺言書の内容に不備があれば、相続人間でのトラブルが発生する可能性があるため、専門家のサポートを受けることが大切です。
シャルル株式会社では、遺言書の作成や相続に関するさまざまなご相談に対応しております。
デジタル化された公正証書遺言の手続きを検討されている方は、ぜひ弊社にご相談ください。
お客様の状況やご希望に応じて、適切なアドバイスとサポートを提供いたします。
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