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遺言の撤回方法について

概要

 遺言は遺言者の死後に効力を発しますが、それまでは遺言者は遺言をいつでも全部または一部を撤回することができます。
 本コラムでは、遺言を撤回する方法についてご紹介いたします。

1. 以前の遺言を撤回して新しい遺言を作成する方法

遺言の撤回方法

 遺言を撤回する最も確実な方法は、新しい遺言を作成し、その中で以前の遺言を明確に撤回することを述べることです。
 この新しい遺言は、自己書面遺言や公正証書遺言など、「遺言の形式」に従って作成する必要があります。
 ただし、以前の遺言とは異なる方法で遺言を撤回することも可能です。
 例えば、自己書面遺言を作成した後に、公正証書遺言でそれを撤回することができます。

事例

 たとえば、自己書面遺言を作成した後、後で公正証書遺言を作成する場合、新しい遺言書で以前の遺言書を撤回する旨を明記すれば、その内容は有効です。

2. 以前の遺言と内容が矛盾する新しい遺言を作成する方法

矛盾する内容の遺言の作成

 新しい遺言が「遺言の形式」に従って作成され、その内容が以前の遺言と矛盾する場合、その部分だけが後の遺言によって撤回されたものとみなされます。
 たとえば、以前の遺言に「不動産Aを長男Aに与える」と書かれていたのに対し、後の遺言で「不動産Aを妻Bに与える」と書かれている場合、後の遺言に矛盾する部分は撤回されたものとみなされます。

部分的な矛盾と撤回

 ただし、遺言は矛盾する部分のみが撤回され、矛盾しない部分については撤回されません。
 したがって、内容が一部変更される場合でも、その他の部分は引き続き有効です。

3. 遺言者が遺言内容に矛盾する法律行為を行った場合

矛盾する法律行為

 遺言者が遺言を作成した後に、その内容と矛盾する法律行為を行った場合、その法律行為によって矛盾する部分の遺言が撤回されたものとみなされます。
 例えば、「不動産AをAに相続させる」とする遺言を作成した後に、不動産Aを第三者に売却した場合、その部分の遺言は撤回されたものとみなされます。

4. 遺言者が意図的に遺言を撤回する方法

概要

 遺言者が意図的に遺言を破棄した場合(民法第1024条第1項)、その破棄された部分について遺言が撤回されたものとみなされます。

自己書面遺言の場合

 遺言者が自己書面遺言を意図的に破棄した場合、その破棄された部分について遺言が撤回されたものとみなされます。

公正証書遺言の場合

 公正証書遺言の場合、原本は通常公証役場に保管されているため、遺言者が手元にある原本や認証済み写しを破棄しても、それは撤回とはみなされません。
 この場合、新しい遺言を作成して以前の公正証書遺言を撤回する必要があります。

裁判例

 2015年11月20日の最高裁判決 (民集第69巻第7号2021頁)では、遺言全体を赤いボールペンで斜線を引いた行為が問題となりました。
 この場合、最高裁は「遺言全体に赤いボールペンで斜線を引く行為は、その行為の一般的な意味からして遺言全体が不要であることを示すものであり、民法第1024条第1項の『遺言を意図的に破棄する』行為に該当する」と判断しました。

 部分的な削除の場合、「加筆その他の変更」として署名と押印が必要ですが (民法第968条第3項)、全体を斜線で引く行為は部分的な削除ではなく、遺言全体が不要であることを示す意図とみなされました。
 したがって、斜線を引いた文字が読める場合でも、それは「加筆その他の変更」には該当せず、「遺言を意図的に破棄する」行為に該当します。

 しかし、裁判での争いの可能性を否定できないため、新しい遺言を準備するなど、より確実な方法で遺言を破棄することを検討することをお勧めします。


遺言撤回に関する専門家への相談

 遺言の撤回や新しい遺言の作成には、法律的な知識と細心の注意が必要です。
 不適切な方法で遺言を撤回した場合、法的なトラブルに発展する可能性もあります。そ
 のため、遺言の撤回や作成に関しては、専門家に相談することを強くお勧めします。

 シャルル株式会社じんせいでは、ご相談いただければ、お客様のご状況に応じた最適なアドバイスとサポートをご提供いたします。
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