1. 概要
遺言書には、大きく分けて自筆証書遺言と公正証書遺言の二種類があります。
自筆証書遺言は遺言者が自分で全文を手書きする遺言書、公正証書遺言は公証人が遺言者の意志を文章にし、公証人が認証する遺言書です。
遺言書を偽造、改ざん、破棄、隠匿した相続人は相続権を失い、遺産の最低分与分を含む相続を受けることができません(民法第891条第5号)。
本コラムでは、遺言書に添付された財産目録の「差し替え」に関する問題をご紹介いたします。
この行為は「偽造」や「改ざん」に該当する可能性があります。
2. 自筆証書遺言の緩和
以前は、自筆証書遺言の全文を遺言者自身が「自筆」で書かなければなりませんでした。
しかし、2019年1月13日に施行された民法第968条第2項により、自筆証書遺言のうち、相続財産を特定するための事項(財産目録)は、パソコンで作成したり、遺言者以外の者が書いたりすることが可能になりました。
また、不動産登記簿謄本や預貯金通帳の写しを添付することも認められています。
ただし、この改正は財産目録を遺言書に「添付」する場合に限られ、非自筆の財産目録は遺言書の本文と別の用紙に作成される必要があります。
遺言者は財産目録の各ページに署名・押印しなければなりません。
一方で、押印する印鑑は遺言書本文のものと同じである必要はなく、財産目録と遺言書本文を綴じる必要もありません。
そのため、遺言者以外の者が財産目録を勝手に作成し、各ページに署名・押印して目録を差し替えるリスクがあります。
3. 財産目録の添付方法
このリスクに対処するための一つの方法として、遺言書本文と財産目録に使用する印鑑を同じにし、目録を添付する際に遺言書本文と目録をホチキス止めしたり、契印を押すことが考えられます。
これにより、遺言書の一体性が保たれ、目録の差し替えリスクを減少させることができます。
4. 遺言書保管制度の利用
次に、遺言書保管制度の利用を考えます。
この制度では、遺言者が遺言書を封印せずに最寄りの法務局(遺言書保管所)に持参し、遺言保管官に本人確認をしてもらい、保管申請を行います。
法務局は遺言書を保管し、そのデータを保存します。
この制度の下では、遺言者が生前に遺言書を閲覧したり撤回したりできるのは遺言者本人のみです。
そのため、遺言者の死後に遺言書が改ざんされるリスクは低くなります。
遺言者の死後、相続人や受遺者は遺言書情報証明書の発行請求や原本の閲覧請求ができます。
また、自筆証書遺言は家庭裁判所の検認が必要ですが、この制度を利用すれば検認手続きが不要です。
ただし、遺言書保管制度はあくまで遺言書の保管を目的としたものであり、遺言書の有効性を確認する制度ではありません。
まとめ
遺言書の偽造や改ざんは重大な問題です。
自筆証書遺言の財産目録が偽造されるリスクを減らすためには、遺言書本文と同じ印鑑を使用し、目録を添付する際にホチキス止めや契印を行うことが有効です。
また、遺言書保管制度を利用することで、遺言書の改ざんリスクをさらに減少させることができます。
相続に関する問題は非常に複雑であり、専門家の助けが必要です。
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